帰国後に申請する厚生年金保険の「脱退一時金」

「脱退一時金」とは 

 厚生年金保険に6カ月以上加入していた人(外国人)は、母国へ帰国後に手続きをすることにより「脱退一時金」を受け取ることができます。

 

 厚生年金保険の保険料を支払っていた期間、すなわち「会社に勤めていた期間(勤務期間)」の長さによって、受け取ることのできる金額が異なります。
 脱退一時金は「会社に勤めていた期間」が6カ月以上で支給されます。勤務期間が6カ月から3年間までの場合は、6カ月単位で支給額が増額されます。3年以上勤めていた場合は、何年勤めていても支給額は同じです。(勤務期間が3年以上の長期間であっても、支給額は増えず一定額です。)
 転職により会社を変わっても、この勤務期間は通算されます。
 ただし日本と「年金加入期間の通算」の協定が結ばれている国の人(ドイツ、アメリカ、オーストラリア、他)注意してください。注意すべき点などの詳細を下記3に記しています。
 制度の要旨は次のとおりです。(要旨のみ記載しています)

 

1. 脱退一時金を受けることのできる人
 次の@〜Cの全てに当てはまる人は、日本を出国後2年以内に請求すれば「脱退一時金」を受け取ることができます。 
 @厚生年金保険に6カ月以上加入していた人
 A日本国籍を有していない人(外国人)
 B日本に住所を有していない人(日本を出て、帰国した後に手続きをします)
 Cこれまで年金(障害厚生年金など)を受給したことのない人

 

2.脱退一時金の金額
 1)支給額の算出方法
  ・支給額は 厚生年金の加入期間の平均標準報酬額×支給率 によって決まります。
                     (a)                (b)

 (a)の厚生年金保険の加入期間の平均標準報酬額とは、
 会社に勤めていた期間中の毎月の「標準報酬月額」と「標準賞与額」の合計額を勤務期間の総月数で割り、1カ月当りの平均額に換算した金額のことです。(これは平成15年4月以降の被保険者期間についての計算式です。平成15年3月以前の期間については「被保険者期間の各月の標準報酬月額×1.3」で計算します。)

 「標準報酬月額」とは平均賃金に相当する金額です。原則、毎年4月、5月、6月の3カ月間の賃金実績をもとにして「標準報酬総額」が決定されます。
 「標準賞与額」とは、支払われた賞与額の1,000円以下の額を切捨てた1,000円単位の金額のことです。

 (b)の支給率とは、
 厚生年金の加入期間、すなわち会社に勤務していた期間によって決まる係数です。

 勤務期間が6カ月から3年間までは、6カ月単位で係数が増加します。3年以上の場合は係数は増加せず一定額です。転職により会社を変わっても厚生年金保険に加入している限りこの勤務期間は通算されます。

被保険者期間
(厚生年金保険の加入期間)

係数
(支給率計算に用いる数)

6月以上12月未満

12月以上18月未満

12

18月以上24月未満

18

24月以上30月未満

24

30月以上36月未満

30

36月以上

36

 

 2)支給額の例示
  ア)前提
    毎月の平均賃金が20万円、賞与1回当り40万円(年2回支給)。
    標準報酬月額…20万円、標準賞与額…40万円 として計算する。
    日本で3年間(36カ月)勤務後、母国へ帰国した人の場合

  イ)計算方法
    (20万円×36ヵ月+40万円×6回)÷36ヶ月
     =(720万円+240万円)÷36カ月 
     =266,666円 ←この金額が平均標準報酬額となります。

     266,666円 ×  14.996 %  ×  1/2 ×  36 = 719,806円
     平均標準報酬額  厚生年金保険料率    係数    脱退一時金

   厚生年金保険料率は、前年10月時点の厚生年金保険料率を用います。

 

3. 社会保障協定による「年金加入期間の通算対象」について
 日本は現在、次の国と「年金加入期間の通算」の社会保障協定を結んでいます。これは外国人の母国と日本での社会保障への二重加入を防ぎ日本と相手国の年金加入期間を相互に通算し年金受給権を獲得できるようにするものです。
 「年金加入期間の通算」措置のある国(2007年11月1日現在)
 ドイツ、アメリカ、ベルギー、フランス、カナダ、オーストラリア

 

 脱退一時金の支給を受けた場合は社会保障協定にもとづき、脱退手当金の計算の基礎となった期間(日本で勤務した期間)は年金加入期間として通算できなくなります。したがって「年金加入期間の通算」が可能な国の人については、帰国後に将来、加入期間を通算して年金として受給するか脱退一時金を受けるかを十分に比較考慮して判断することが必要です。

 具体例で説明します。日本で5年間会社に勤務していたドイツ人が本国へ帰国したケースで見てみましょう。
 この人は帰国後に脱退一時金を請求することができます。ここで脱退一時金を受け取ると、日本で勤務した5年間は、将来本国で年金を受け取るときに「年金の加入期間として通算されない」ことになります。どちらを選択するかは任意ですが、脱退一時金を受けた場合は、その期間だけ将来の年金の加入期間が減るということに注意してください。

 

4.厚生年金保険について
 厚生年金保険に加入していれば、年を取ったときの老齢年金だけでなく、加入期間中の障害や死亡についても障害年金遺族年金として年金が支給されます。業務外の障害や死亡に備えた社会保険という面があります。
 数年後に帰国することがあらかじめ分かっている場合であっても、「老齢年金を受け取ることがなく、保険料の払い損になってしまう」という訳ではなく、帰国後に「脱退一時金」を受け取ることができます。
 また会社に勤務している期間中の障害や死亡についても、障害年金遺族年金を受けることのできる社会保険です。
 こうした制度の内容を十分に理解され、安心して会社で勤務されることを期待します。

 

 上記の説明内容をA4版文書(PDF)で見るにはこちら